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カルカソンヌ・ミープルズ

ボードゲーム「カルカソンヌ」を主に競技レベル(たまにカジュアル)で楽しむサークル「カルカソンヌ・ミープルズ」の告知・報告などを行っています!



【コラム】カルカソンヌ世界選手権2015決勝の終盤を読み解く

さる2015年10月11日、ドイツのエッセンシュピールで開催された、カルカソンヌ世界選手権2015。
日本からは、日本チャンピオンの根岸さん、そして前年度世界チャンピオンの望月さんの2名が出場!
そして、望月さんが予選ラウンド5勝1敗の2位で決勝トーナメントに進出するも、前年と同じ組み合わせとなった決勝戦で、ギリシャ代表のパンテリスさんに敗れ、準優勝になった、ということでした。
昨年の優勝に続き、準優勝……凄い結果なのですが、実力的には優勝できた、という悔しさもあるところ。
それにしても、望月さんにはおつかれさまです! 日本は大いに盛り上がりました、ありがとうございました! という感想になります。

終盤で何があったのか?

……さて、大会の様子は、メビウスママを始めとする現地勢のツイート頼みでした。
ということで、全体の細かい流れもわからないのですが、いくつか投稿された経過写真から、「望月さんが優勢なのではないか?」という推測も日本のカルカソンヌマニア間ではなされていました。

(※そういえばカルカソンヌ仮面さんは、今年の日本選手権の動画でも、中川さん優勢って終盤まで言っていたなあ、ってふと思い出した)

……しかし、結果はパンテリス氏の勝利。
スト2手で連続草原相乗りを果たし、逆転の4点差勝利だった模様です。

これだけだと、最後の最後でパンテリスさんの引きが良かった? また、望月さんは終盤に接続を防げなかったのか? という見方もできますが……。

この状況、図にすると下のようになります(図1)。f:id:CarcassonneMeeples:20151013024203p:plain

……じつはここではもう残り3枚で、次のパンテリスさんの引きで勝敗が決する状況でした。
残りタイル3枚のうち、1枚の道無し二辺都市をパンテリスさんが引けば、左から草原相乗り(図内ポイントA)。
しかし、次に望月さんがカーブで中央の相乗りを防ぎつつ草原で3点(図内ポイントB)。望月さんの勝ちです。
一方、2枚あるカーブをパンテリスさんが引けば、中央から草原相乗り(図内ポイントC)。残り2枚がともに左側乗っ取り(図内ポイントA)できるタイルなので、パンテリスさんの勝ち。
実戦では、2/3の確率通り、パンテリスさんがカーブを引いて勝利となっています。

この瞬間、パンテリスさんの勝ち確。望月さんが先引きをしていないのは、おそらく「カーブを引かれていたら負け」とわかっていたから、でしょう……。

このように勝負を決めた乗っ取りは、2/3=66.7%の引きだったわけですから、パンテリスさんの運が良いわけではなく、置き方が上手かった、とも取れます。

むしろ黒の鬼引きはその前だった!?

 ……しかし、これ以前ならどうだったのか?
すると、意外な事実が判明するのです!

まず、このツイート。
この段階の場面を図にするとこうなります(図2)。

f:id:CarcassonneMeeples:20151013024247p:plain


図1から5手、遡った状況です。
ボード上ではパンテリスさん(黒)3点リードですが、盤面得点では望月さん(緑)が優勢なのがわかります。
黒が中央の12点草原を2回接続して乗っ取ったところで、ようやく勝負になる、という状況。やっぱり、終盤にさしかかるまでは、望月さんが優勢だったと言えるでしょう。
(※細かい解説:ボード・盤面得点を合計すると、黒82、緑96で緑が14点差リード。黒が草原を奪うと、黒82+12-3=91点、緑96-12=84点。ただし乗っ取りには2手必要なので、黒が乗っ取り以外に使えるのは2手。一方、望月さんは4手。つまり、望月さんがその2手ぶんで8点以上取れば、黒は届かない。とはいえ両者手持ちミープルは1ずつのみなので、2手で8点は簡単ではない)
要するに黒は、もう草原乗っ取りに賭けている状況でした。

ところが、それが5手後には、図1のような66%黒勝ちになっています。
……この間、何が起こったのか?

f:id:CarcassonneMeeples:20151013024310p:plain


図2(63手まで)~図1(68手まで)の間の5手を、赤く囲ってみました。

これを見ると、左下の三辺都市が緑・68手めだったと推測できます。さらに……。

ひとつ前のツイートを見ると、右上のT字一辺都市が黒・67手めだったと思われます。つまり……。

f:id:CarcassonneMeeples:20151013024340p:plain

64~68手めの流れは、こうだと思われます。
……そう、65手めと67手めで、黒が空き一辺都市を連続で埋めて、この間に8点を奪っているのです!
さらに緑はこの2手で、草原乗っ取り防止ができるタイル3枚(カーブ、T字一辺都市:確率3/8)を引けなかったのです。
結果が4点差だったことを考えると、このノーリスク8点が如何に大きかったか、ということになります。
……つまり、黒のパンテリスさんは、最後の残り8手(双方4手ずつ)の流れがすべてパーフェクトなのです。
……とはいえ、パンテリスさんが如何に追い詰められていたか、がわかるのは、67手め。
この手で、黒は空き都市完成でノーリスク4点を取っています。
……しかし、64の左に置けば、自らの乗っ取りポイント防衛+道3点確定にできるのです。
結果は4点差だったので、結果論では防衛の方が堅い手だったといえますが、決勝で劣勢という状況下で、少しでも点を多く取る方に心情が傾いていたのかな、と推測できます。

ここでの最善手って……?

 さて、カルカソンヌ研究としては面白そうな場面が、64手め・緑の一手です。

f:id:CarcassonneMeeples:20151013024403p:plain


この状況で緑としてはもっとも引きたくないタイル、直線道路一辺都市。
実戦ではポイントAで、乗っ取りを防ぐ土台にしています。
・ポイントA
(1)カーブ×2、T字一辺都市と乗っ取りを防ぐタイルは3枚。
(2)都市を空けるリスクはあるが、T字一辺都市なら乗っ取り防御に使うのが普通。並行都市を引かれない限りセーフ(結果、確率1/7で引かれましたが)。
(2-B)都市にラストミープルを置くのは、右上に6点草原があり、左下の自分の修道院周りに空き都市もあるので、ここでは置くほうがリスクが高い。
……と、そんなにおかしな手ではないですし、むしろいい手に思えます。

あと考えられるのが、左側からの乗っ取り防止土台となる、ポイントBとポイントC。
・ポイントB
(1)乗っ取りを防げるのはカーブ×2のみ
・ポイントC
(1)乗っ取りを防げるのはカーブ×2、並行都市、道無し二辺都市の4枚。
(2)並行都市を相手に引かれると4点+草原3点を取られるが、そうすると乗っ取り不能。T字一辺都市を引かれると4点+草原3点+カーブで乗っ取り確定、となるが、そうするとカーブ2枚を黒が両方引くことが乗っ取り条件になるので、若干緑有利にはできる。
(3)三辺都市×2を引かれると、道なし二辺都市待ち確定にされて、緑にとっては良くない形。
……という感じでしょうか。
個人的にはポイントCが最適解? と考えますが、どうでしょうか?

……とはいっても、これ、得点、残りタイルをすべて図示化して、初めて見えた手だったりします。
というか、実戦でその手が思いついたか、というとたぶん無理です。何より、黒が乗っ取りできなくても7点献上の可能性があるわけですし。

ともあれ、カルカソンヌの奥の深さを改めて思い知らされますね……。

※図の作成には、例によってカルカソンヌ研究所さんの盤面エディターを使いました! ありがとうございます!
※決勝の完成図作成には、TRAPSの皆さんが作成した再現図を参考にしました! ありがとうございます!

※ちなみに、1ヶ所(入れ替えているので正確には2ヶ所)だけこの写真と図では、計算したら合わなかったので入れ替えているタイルがあります。どこでしょう?(※ちなみに図2・Bだけ最初に作ったのを修正しそこねていて、こちらの写真と同じ状態です。他の4つの図とは違っています)